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子どもが描いた渦の絵

世田谷のイベントを終えた次の日は、ルービンが二〇〇九年にも参加させて頂きました「金沢文庫芸術祭」が控えていました。


二〇一〇年八月に、私たちは横浜の金沢区にあります海の公園で行われた金沢文庫芸術祭の全体ミィーティングに参加していました。冒頭には、チーフプロデューサーの浅葉和子さんより、芸術祭の趣旨についてのスピーチを頂きました。


「子供達のために、持続可能な生き方を、アートを通じて提唱していきたい!」そういう想いを持っていた時に、一つのアメリカ先住民族の絵と出会い、それを通じて、浅葉さんの持つ想いを実践している人達がいる事を知ったそうです。浅葉さんは、アートは人の心を開くと仰いました。そのお話しを聞いた時に、一人ひとりが、心を開き、自分自身に対して素直になる生き方を選択することで、平和が実現されるというルービンの祈りと、浅葉さんの祈りが結ばれ、子供たちの中で、その和が広がり、繋がろうとしているのだなと感じました。


私達にとって、浅葉さんのスピーチは、とてもパワフルでした。芸術祭は、今年で一二年目という事ですが、はっきりと趣旨を説明されたのは、この時がはじめてだそうです。一二年間積み上げてきた、揺るぎのない信念と強さを感じ、感動し目が熱くなってしまいました。


夏至にホピを訪れたときに、一人のグランドマザーとの出会いがありました。その時は、女性性についてお話を色々と頂き、その包まれるオーラに感激しましたが、この日の浅葉さんの雰囲気にも、それに劣らない偉大なるものを確かに感じました。私達は、よく枠の外に解決を見出そうとしますが、実はすぐ近くに、自分にとっての、エルダーやグランドマザーがいるのかもしれません。


さて、この金沢文庫という場所は、イーグル(鳶)が人に近寄ってくれる聖地として、ルービンが愛着を持っている場所でありました。前年の芸術祭では、祈りを捧げるダンスができなかったという想いも強く、今回こそは、人々が素直な生き方を選択できるよう、近寄ってくれるイーグル(鳶)に祈りを運んでもらうためにも、イーグルダンスを踊らせて頂くことになりました。


そして、芸術祭の「未来の子供たちのために」というコンセプトに共感したルービンの希望から、虹の翼隊(子供たち)を対象に、アートクラスも企画させて頂く事になりました。


当日は、晴天に恵まれ、無事に青空の下でアートクラスを開催することができました。子供たちが飽きてしまわないようにと、絵を描く前に、ホピの伝統的なラウンドダンスを皆で輪になって踊ろうと、ジョーダンの歌声とドラムのビートと共ににぎやかな雰囲気で始まりました。ダンスの雰囲気がとても陽気だったためか、周りにいた子供たちはすぐに興味を持ち、輪に参加して体を動かしていました。


ダンスの後は、いよいよメインのアートクラスが開かれました。ルービンは、カチーナ(精霊)の人形を持ち上げ、子供たちに、こう言いました。


「私たちの文化では、カチーナ(精霊)の存在を、とても大切にしています。なぜなら、この存在が、私たちに学びや気付きを与え、私たちが争わないよう、私たちを一つにしてくれているからです。時に、カチーナ(精霊)は目に見えない存在かもしれませんが、私たちは、このようにカチーナ(精霊)を感じて表現しています。ここにある、カチーナ(精霊)の人形を真似て描いてもらっても構いませんが、あなた方が感じている、自分にとって一番大切だと思う存在をアートを通じて、表現して欲しいと思います。」


子供達に対して、少し訳が難しいのではと、妻の智美に指摘されましたが、子供たちは、目の前に置いてあるマジックペンを片手に、並べられていた画用紙に、黙々と絵を描き始めました。


しばらくすると、一人の小さな女の子が、ルービンの背中を叩き、絵を描き終わった素振りを見せました。ルービンは、それに笑顔で応え、頭を撫でながら「良くできました」と言って、自分が描いていた、途中だった絵にまた向かおうとしました。すると、女の子は、ルービンの服を引っ張り、眉間にしわを寄せ、とても悲しい顔をしていました。


「どうしたの?」


とルービンは問いました。すると、女の子が


「もっと良く見て!そして聞いて!」


と言いました。ルービンは、もう一度描かれた絵を良く見ました。女の子の絵は、とてもシンプルに、茶色の渦が描かれていました。そして、ルービンが、女の子に


「これは何の絵なの?」


と聞きました。女の子は、自慢げに、喋りだしました。


「私は、ここから来たの。そして、この線は、私が辿ってきた道。そして、私は同じ場所に戻るの。」


ルービンは、とっても驚いた顔をして、大きな声で「ワーウ」と言いました。そして、女の子に言いました。


「話しを始めに聞かなくてごめんなさい。あなたは、私に気付かせ、教えるために、メッセージを伝えに来たのですね。もう、今は、あなたが何を伝えたいのか、分かりました。このシンボルは、ホピではとても大切な意味を持った形です。何故、あなたは、これを描こうとしたのですか?」


女の子の表情は一気に晴れ、大きな笑顔で答えました。


「だって、今、ここでこの形に沿って踊ったじゃない」


ルービンは、また驚きの顔を見せて、私にこう言いました。


「私はこの子供から、三つのことを学びました。ひとつは、子供たちの声にもっと耳を慎重に傾けなければいけないという事。ふたつ目は、踊りが持つ意味を決して忘れてはいけないという事。そして、三つ目に、この渦のシンボルが、私たちに、今、強く伝え、訴えかけようとしている事を認識しなければいけないという点です。この女の子に、ありがとうと伝え、ここにいる全員の描いた絵を見て、しっかりと耳を傾けると約束すると伝えてください。」


この話しを聞き、私はホピの村で見た、渦のシンボルを思い出していました。良く思い返すと、予言の石版を管理していた、火氏族のマーティン長老と共に過ごした場所でも、黒い渦のシンボルが話題になったことを思い出しました。ツアー開始の数週間前に、沖縄県久高島の沖にも、謎の大きな渦が出現したという事で、沖縄のシャーマン、比嘉良丸・りかご夫妻からも連絡は頂いていましたが、まさか、子供の絵から、渦のシンボルを目にするとは思っていませんでした。


この渦のシンボルに関連し、ツアー最後に訪れた久高島でも、お目にかかることになりましたが、この事につきましては、また改めて書きたいと思います。

at 20:23, 先住民ホピ族(水氏族)ルービン・サウフキーのアナンダラバ, ホピの生き方と日本の和を語る

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