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恵みとしての黒い雨

青桐の前でお祈りさせていただいていた所に、泉の番人である宇根利枝さんがお越しになりました。


お祈りを一緒にさせて頂いた後に、一同は早速その泉に向かうためタクシーに乗り込みました。向かう途中のタクシーの中で、宇根さんが静かに口を開きました。


宇根さんは、原爆が投下された時に、たまたま山の裏側におり、奇跡的に影響を受けずに助かりました。当時は、保母さんのお仕事をされていたとの事で原爆が投下された直後に、子供たちを心配し、山を駆け下り市街地まで探しに行きました。


川に到着すると、地獄に似た光景が飛び込んできました。人々は、宇根さんに水を求めてきました。川には既に沢山の方が亡くなっており、川の水を飲み水として運ぶ事が出来ませんでした。近くにあった井戸を見つけ、その水を求めてきた人に飲ませたあげた所、息を引き取っていったそうです。


その時に、大気中の空気や周辺の水が、原爆の影響によって汚染されている事を近くにいた人から知らされました。そして、黒い雨(汚染された雨)が降らされたのです。


宇根さんは絶望的な気持ちになり、苦しんでいる人に普段身近にあった水を運べない事に対して悔やみました。そして、自分が運んだ汚染された水によって、命が奪われた事について自ら責め続けたのです。


宇根さんは、何日か後に自分を守ってくれた山の中へ戻り、そこで不思議な体験をしました。山の中へ入ると、分かれ道でおじいさんと出合いました。おじいさんは、片方の道を指していましたが、宇根さんは、あえて逆の方向を覗きこみました。すると、光が輝いているのが見えました。その光に導かれるように、道を辿って行った所、泉があったそうです。


こうして宇根さんは、その日からこの泉を守るようになり、毎年原爆が落とされた日に、あの日届けられなかった新鮮な水を、慰霊碑と青桐の木に運ぶ事となりました。


ずっと黙って聞いていたルービンが、ゆっくりと話し始めました。


「どうか自分の事を責めないでください。あなたが運んだ水は、放射能によって汚染されていたかもしれませんが、水はあなたの願いや祈りを確実に聞いていました。その水を飲んで息を引き取ったのは、本当は汚染されていたからではなく、これ以上苦しみを与えないよう水のスピリットが、働きかけたのだと思います。人々は「黒い雨」を、悲惨な出来事として捉えていますが、私はそう思いません。「黒い雨」は、黒くなる前には、シンプルに雨や雲だったのです。つまり、「黒い雨」は、精霊たちによる慈悲からもたらされたものだったと私は信じています。


それ以上に、私たちは、この偉大なるグランドマザーから、学ぶべき事があります。それは、心を開いた私たちが、身近にある湧水や泉の存在を知り、枯らさないよう祈りと共に水を汲み、大地と生命のために守るという事です。


ホピに帰ったら、まず最初に聖なる泉に行きたいと思います。既に枯れてしまっている泉もありますが、水氏族として、しっかりと守りたいと思います。


宇根さん、私たちの先祖、そして良き未来のために今までずっと水を運んでくれてありがとうございました。そして、あなたが経験した辛い出来事を話すため、勇気をもって立ち上がってくれて事に感謝しています。」


そして宇根さんは、こう言いました。


「今日はとても素晴らしき一日となりました。今日まで生きてこれて本当に良かったです。」

at 23:20, アナンダラバ事務局, ホピの生き方と日本の和を語る

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